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WORKING PEOPLE なかなか聞けない仕事のホンネ。人生の先輩達に聞いてみました。 今回お話を伺った職業は・・・美術館学芸員

どんなお仕事?

具体的には
どんな業務?

この職種を
目指そうと
思ったきっかけは?

現在に至るまでの
ステップを
教えてください。

今までで一番
思い出に残っている
出来事は?

仕事の中で
「ここにやりがいを
感じる!」
というところは?

仕事で
「正直ここがツライ!」
というところを
教えてください。

この職種に
必要だと思われる
資格や要素は?

仕事のために
普段から
心掛けていること
はありますか?

お薦めの美術館を
教えて下さい。

今後の目標や夢を
教えて下さい。

この職種を目指す
若者へアドバイスを
お願いします。

どんなお仕事?
展覧会の企画・準備とそれに付随する業務です。展覧会には全員で関わるものと西洋美術や古美術、近代美術といったように各学芸員の専門分野からのものがあり、通常は1つの展覧会につき、メインの学芸員1人の他に、2~3人の学芸員でチームを組んで行っています。もちろん自分の専門外のものを担当することもありますので、一から勉強をするということもよくあります。大体形が見え始めてから展覧会をオープンするまでが1年かかり、長いもので2年といったところです。
具体的にはどんな業務?
まず作品の貸し出し交渉から始まります。作家本人、コレクター、美術館や博物館、お寺や神社といった全国各地の所蔵者へ出品交渉をして回ります。行ってひたすら「貸してください」と(笑)。最初は「これを借りたい」という言わばドリームリストがあるわけですが、それがすべて手に入るということは残念ながらまず無いですね。全国各地を巡回する展覧会の場合は、巡回先の美術館の学芸員の方たちと手分けして行っています。交渉が終わると、次は展示に向けての準備になり、まず図録といって写真や解説の載った本の編集を行います。使用する写真の撮影から原稿の校正まで行い、それと平行してポスターやチラシといった印刷部の作成も行っていきます。それらが全て終わると、作品の借り出しに出ます。作業員の方とトラックに乗って、長い場合は1ヶ月近く出ることもあります。作品ごとに調書といってカルテのようなものがあり、学芸員が自分の目と手で作品のコンディションをチェックしながら慎重に搬送を行います。作品を箱から出した時、返却する時も同様です。搬送が終了すると準備も最終段階となり、展示の図面作成と展示作業に入ります。自分の積み重ねてきた経験から、動線やライティングを考えながらレイアウトを仕上げていきます。オープン当日は「ああ、1つ終わった」という感覚に浸りながら見守っています。そして休む間もなく、すぐに作品の返却スケジュールを立てていきます。 基本的にはこういった展覧会に関する業務を行いつつ、それぞれの専門分野における調査・研究というのが加わってきます。学芸員は年に1度、自主的に研究結果を報告書として冊子にしているんですが、他の学芸員たちによる研究・調査報告書を見ていると、とても良い刺激を受けます。また、僕達はあくまで公務員ですので、普段の大半は経費の処理といった雑務などに追われていますね。
この職種を目指そうと思ったきっかけは?
もともと幼少期から歴史好きで、特に日本史に興味を持っていました。将来は考古学を勉強しながら発掘調査や研究をするような学芸員になりたいと思い、奈良にある大学へ進みました。しかし実際に大学でいろいろと学んでいくうちに、「どうも自分には向いてないな...」と感じ始め、2回生になったとき、同学部で別の学科として存在していた美術史のコースに転進しました。簡単に言うと、美術品を通して歴史を学ぶという学問です。
現在に至るまでのステップを教えてください。
学芸員は就職口がとても少ないんです。都会の方だと、1つの採用枠に何百人という人が応募します。僕自身も大学院卒業後はすぐに見付からず、アルバイトをしながら就職に繋がるいろいろな情報を得るために研究生として大学院に籍を置いていました。そして2年目にしてようやく大阪にある美術館に採用が決まり、やっと学芸員としての職を得ました。しかしその後の景気の悪化によって、当時最年少だった僕はなんとリストラをされましまったんです。「一番年齢も若く将来が有望」という理由でした(笑)。そこからは、失業保険をもらいながら職安に通う生活で、大学院にも研究生として戻り「あと1年やって駄目だったら止めよう」と思いながら過ごしていました。そしてちょうど1年も経たない頃に今の職が見つかり、本当にラッキーでした。
今までで一番思い出に残っている出来事は?
2年前に行った展覧会のときです。ある美術館と一緒にその展覧会を行うため1年以上前から動いていたんですが、先方の美術館の担当者が年度変わりということで入れ替わり、うちのメインの担当者が病気のため亡くなってしまうという出来事があったんです。歳も1つしか違わないその同僚の死を僕自身もなんとか乗り越えようとしながら、当時サブとして入っていた僕は、引き継ぎが無いままいざ仕切り直しということで先方の美術館の担当者と顔合わせに行ったんです。そこで実は動いていたと思われていた展覧会は何も動いていなかったということが判明しまして。作品も何も決まっていない状況で、それがオープンの3ヶ月前のことでした。実はそれからの記憶が僕は全然無いんです。とにかく毎日電話をかけては出品交渉のため出張に行くといった生活で、当時僕はそれとは別にもう1本別の展覧会が進行させていましたのでよく乗り越えたなと今振り返っても思います。展覧会をオープンさせたときは、さすがにいろんな事が込み上げてきて涙がでましたね。
仕事の中で「ここにやりがいを感じる!」
というところは?
やっぱり本物と接することが出来るというところです。皆さんは普段ガラス越しに見ることが多いと思いますが、僕達は実際に触れることができますので、そこが役得だと思います。本物に接している時間というのは格別です。今でも作品に触れるときはいつも緊張します。
仕事で「正直ここがツライ!」
というところを教えてください。
西洋美術や現代美術に比べると、古美術というのはあまり人気が無いんです。どうしても敷居が高いイメージを持たれてしまって不利ですね(笑)。でも、実はアニメなどで古美術に影響を受けている作品というのも沢山あるんですよ。いかにそういった不利なイメージを噛み砕いて楽しそうと思っていただくか、というのを日々意識しながら皆さんの目に触れるポスターやチラシといったもののデザインに努めています。
この職種に必要だと思われる資格や要素は?
学芸員資格という国家資格が必要になります。毎年何千人という単位で取られている資格で、大学在学中にわりと簡単に取得できるものだと思います。単位数も少なく司書や教員免許と重なる単位も多いので、併せて取るという人もいますね。 学芸員に必要とされるのは、知識や美術品に対する愛情ももちろん大事なのですが、僕がよく言っているのは「体力・愛想・要領」の3つです。この中でも一番大事だと思うのが要領で、企画を進めていくなかで突き通さなければならないところ、流すところというのを即座に判断する能力が必要とされます。また、チームメンバーを仕切るなど、「自分の展覧会は自分で操縦する」という意識を持ってすべてに目を行き届かせるという管理・監督能力も必要です。これがきちんと出来ていないと悲劇が起きてしまいますので(笑)。僕自身も経験を積むことによって、てきぱきと要領良く一度にいろんな事が出来るようになりました。
仕事のために普段から
心掛けていることはありますか?
国内・海外ともに出張が多い仕事ですので、空き時間があれば何か必ず展覧会を見て帰るようにしています。普段からもとにかく他の展覧会を見て、盗めるところは盗んで自分の展示企画に活かしています。
お薦めの美術館を教えて下さい。
僕の専門になる古美術でお薦めなのは、奈良国立博物館です。宝の山なんですよ、あそこは。京都や奈良近隣のお寺さんが大事な仏像などを預けていて、そういった貴重な作品が何時行っても見られるのが魅力です。奈良公園内に立地していて雰囲気もいいですし、帰りは周辺にあるお寺巡りをするのがお薦めです。真面目で遊びは少ないけれど、とてもカッコイイ見せ方をしている博物館です。 あと愛媛県美術館です(笑)。美術館の特色というのはコレクション(常設展)で決まるのですが、公立館の場合は作品を県民皆さんの税金で購入しています。幣館では魅力的な作品を揃えていますので、県の財産として絶対に損はさせないという自信があります。企画展でお立ち寄りの際は、余力を残して是非見て帰っていただきたいですね。
今後の目標や夢を教えて下さい。
仕事では、なるべく今の忙しさがずっと続くことを願っています。僕は忙しくないと、いろいろと余計なことを考えてしまう性格なので...(笑)。余生は、大学時代に住んでいた奈良にもう一度戻りたいと思っています。お寺のすぐ近くでペンションや喫茶店を営みながら過ごすというのが僕の『夢』です。
この職種を目指す若者へアドバイスをお願いします。
この仕事は憧れている方も多く、一見華やかに見える仕事ですが、実際の現場は戦場です。自分の勉強する時間は自分で確保しなければいけませんし、本当に気力・体力のいる仕事です。普段の仕事は常に外と繋がっていくものが殆どで、展覧会に関わるいろいろな人たちとの人間関係が企画を進めていく上でベースになってきます。自分の描いているイメージや、やりたいことをきちんと伝えるためには、普段からのコミュニケーションが要になってきますので、そういったコミュニケーション能力という部分でいかに良い着地点を自分で見つけていくかが重要だと思います。僕自身、知識は後から付いてくるものだと思っています。
カバンの中身を見せてください!
(写真奥から時計回りに)
●ペンライト●デジカメ2台●カードケース
●スケジュール帳●ミュージックプレーヤー
●白手袋●書籍2冊『かたじけなさに涙こぼるる』『白洲正子 祈りの道』
作品を見る際に使うペンライトと白手袋、資料・作品などの撮影用にカメラ2台はいつも持ち歩いています。本2冊は、現在進めている企画のために読んでいる白洲正子さんの著書です。